ジャーナル

スロウなハイキングとチーズを満喫する。中標津と根室を巡る旅

はじめまして。スロウ編集部の山口翠(みどり)です。帯広を拠点に全道各地を巡り、行く先々で出会った人やもの、ことを紹介する「northernstyleスロウ」という雑誌を作っています。今回の旅の舞台は、中標津と根室。「ハイキング」と「チーズ」をキーワードに、道東の豊かな自然、そして食を満喫する旅に行ってきました。

北海道に移り住んで9年目となる私ですが、中標津と根室を訪れるのは、実は今回が初。行く先々に新鮮な景色・おいしい食べ物に出合った2日間。お腹も心もいっぱいに満たされた旅の模様をお届けします。

1日目:開陽台で山の景色を楽しみながら、地元産チーズを食べ比べ

開陽台展望館

旅を始める前に訪れたのは、中標津の市街地にあるアウトドア&コーヒーショップ「UB COFFEE」。店内でコーヒーを飲みつつ長距離移動の疲れを癒やしながら、この旅に欠かせないアウトドア用品を調達します。

UB COFFEEから20分ほど車を走らせて向かった最初の目的地は、開陽台展望館。車を降りたのは、展望館のある地点から少し離れた駐車場です。調達したアウトドア用品を詰め込んだザックを背負い、目線の先に建つ展望館へ。軽いハイキングの感覚で歩き始めます。

ルートは登りがメインですが、ところどころにベンチや小さな展望台が設けられており、写真を撮ったり、足を止めて遥か先まで広がる広大な景色を楽しむことができます。そうこうしているうちに30分ほどで展望館に到着。広大な景色が一気に目の前に現れました。

前方には、斜里岳、武佐岳などの山々が、後方には中標津の町と、さらにその向こうには根室海峡が広がります。取材日は空気が澄んでいたので、海の向こうの国後島や北方四島の最高峰、爺々(ちゃちゃ)岳をうっすらと見ることができました。山と海、草原に囲まれて。道東の果てしない自然を全身で感じた瞬間でした。

そんな景色を堪能しながら、少し遅めのお昼ご飯に。背負ってきたザックからレンタルしたアウトドア用の調理道具、チーズとUB COFFEEの自家製カンパーニュを取り出し、火をおこして温めます。

中標津産3種のチーズを贅沢に食べ比べ。とろりと溶かしたチーズをパンの上に乗っけたり、チーズフォンデュ風にパンをチーズにたっぷり浸して食べたり。もちろん、そのまま食べても良し。思い思いの食べ方で味わいます。

実は、星の観察にも最適なスポットとして知られる開陽台。夜に訪れるのもおすすめです。展望館の建物内にある階段は中心を囲むように段差が設けられているので、最下段から夜空を見上げると、町の明かりが目に入らず、真っ暗な中で星と対面することができます。

 

>>UB COFFEE店内の様子はこちら

ushiyado

道東の景色を思いのままに堪能した後は、本日の宿となるushiyadoへ。町内の竹下牧場が営むこのゲストハウスのテーマは「牛」。部屋の名前や、牛舎の骨組みを再現した空間演出、仔牛を飼育するカウハッチを模したドミトリーなど、いたるところに散りばめられた牛や牛舎モチーフの内装が目を引きます。

ushiyadoが提供するのは宿泊のみ。これは、「町全体を宿に見立てる」というコンセプトゆえ。飲食や温泉などの店や施設を宿泊客が利用することで、「地域内で交流が生まれる」という狙いがあるのだそうです。飲食店が数多く並ぶ中標津町内。「チーズ」という括りで店を探してみても、地元民御用達のレストランや餃子屋、ピザ屋、うどん屋など、さまざまな店が候補に挙がってきました。その日の気分や好みに合わせて、店を選んでみてくださいね。

明日は早起きして竹下牧場へ。早朝牧場散策に参加します。

2日目:たくさん歩いて、食べて。目指すは、もの思いにふける丘

竹下牧場 朝の牧場散策

2日目の朝6時。眠たい目を擦りながら向かったのは、ushiyadoから20㎞ほど離れた場所にある竹下牧場。「牛が最もダイナミックに活動する」という搾乳時の牧場を見学しました。

迎えてくれたのは、代表の竹下耕介さん。最初に案内してくれたのは、搾乳を終えた後の牛たちが食事をしている牛舎。一生懸命に口を動かしながらも、好奇心旺盛にこちらを見つめる牛たちのつぶらな瞳が印象的でした。別の牛舎には、昨日生まれたばかりだという仔牛の姿も。きょとんとした寝ぼけ顔に思わず頬が緩みます。

牛舎を回りながら、搾乳の流れや牛の生態、牛が生まれてから母牛になり、寿命を迎えるまでの一生など、さまざまな話を聞かせてくれた竹下さん。中でもハッとさせられたのは、「酪農家の仕事とは、牛の命をつなげること」という言葉でした。乳製品の原料となる生乳を分けてくれる牛たち。私たちの食、ひいては生活を支えていると言っても過言ではありません。そんな彼らが牧場でどんな日々を過ごし、どんな一生を送っているのか。共に暮らす酪農家が何に苦労し、何を考えているのか。牧場で行われている日常のごく一部分を覗かせてもらったことで、牧場から届く乳製品に対する見方が変わったように思いました。

「中標津の酪農の現場を見てもらいたい」と始まったという、早朝牧場ツアー。食卓から遠く離れた牧場で営まれる牛と酪農家の日々。休まず行われているこの営みが日本の食を支えているのだということを身を持って実感する時間となりました。

根室フットパス・厚床パス

牧場散策を終え、朝食を食べて向かったのは、根室市明郷(あけさと)地区にある「明郷伊藤☆牧場」。牧場内にある土産物店「ちいさな雑貨屋E’table & 酪農喫茶GrassyHill」で食材を調達し、厚床駅へ向かいます。

ここから始まるのは、「厚床パス」と呼ばれるフットパスを歩くトレッキング。根室市内の酪農家5人組集団「AB-MOBIT(エービーモビット)」によって作られたこのフットパスは根室市内に6つあり、「厚床パス」はその中でもアップダウンが少ない、比較的歩きやすいコースになっています。

先人たちの開拓の末、今では大酪農地帯となった厚床~別当賀エリア。開拓時代に人員と貨物輸送のために開通した標津線跡や馬市場跡地、薪炭林(しんたんりん)などを回りつつ、数10年前に確かにここで行われていたのであろう人々の営みに思いを馳せます。

このコースはフットパス利用者以外、人や車通りがほとんどなく、エゾシカや野鳥、キツネなどの野生動物に出会えることも。取材時には立派な角を生やしたオスジカや、タンチョウの親子が鳴き交わす姿を見ることができました。

1時間ほど歩き、いよいよこの旅のクライマックス、「もの思いにふける丘」へ。走り出したくなるような、どこまでも続く牧草畑。通常は一般の立ち入りが禁止されていますが、厚床パスの参加者だけが歩くことができる特別な場所です。

眺めの良い丘の上に到着した後は、お待ちかねのお昼ご飯タイム。1日目と同じように、自分たちで背負ってきたギアを使って準備をします。「明郷伊藤☆牧場」で作られた「短角和牛のビーフシチュー」と「鮭・ほたて・花咲蟹のシチュー」、「プレーンベーグル」をいただきました。

ごろっと大きな肉が食欲をそそるビーフシチュー。肉は口に入れた瞬間、ほろっと崩れるほどの柔らかさ。海鮮出汁が効いたクリームシチューは、根室の海の恵みがギュッと凝縮されていて。モチモチ食感のベーグルとの相性も抜群です。たくさん歩いてお腹が空いていたのでしょう、ひと口、またひと口と食べ進める手が止まりませんでした。

まるで映画のワンシーンかのような、非日常的な景色。そんな景色を目の前に、おいしいものを口にしながらのんびりと過ごす静かな時間。せわしない日常から解放され、何もせずただボーっと時が流れるままに身を任せているのも、ある意味贅沢な時間のように思いました。

旅のまとめ

歩いて食べて。豊かな自然を感じて、また食べて。おいしいものと心惹かれる景色で満たされた2日間。

何もない、だだっ広い道東の地。でもその余白こそ、今私たちが必要としているものなのかもしれません。気の置けない仲間と穏やかな時間を過ごしたり、野鳥の声に耳を澄ませてみたり。考えごとも捗りました。

初めての中標津・根室旅。この2日間でこれだけの発見があったのだから、これからまだまだ知らない魅力、素敵な人やもの・ことにも出会えるはず。また近いうちに来ようと思います。次はどんなおいしいもの、景色が待っているのでしょう。今からとても楽しみです。

 

この旅は「知床ねむろ北太平洋シーニックバイウェイ」の協力で実施しています

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編集者

北海道の雑誌「northernstyleスロウ」の編集者・ライター。10年ほど前に神奈川県から野生動物と豊かな自然を追い求めて北海道へ。現在は道東を中心に、素敵な人やものとの出会いを求めて駆け回る日々を過ごす。好きなものは、焼き芋とあんかけ焼きそば、山の景色。道内の山を一緒に登ってくれる山仲間を募集中。

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心があったまる人・店・景色に出会える北海道のウェブメディア。パン屋やカフェ、ギャラリーなど、とっておきの寄り道情報をおすそ分け。毎月1冊、ひとつのテーマを掘り下げる縦型マガジンを公開中。最新情報はInstagramから。

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