ジャーナル

野鳥と、動物と、潮風と。3つの岬を巡る知床ねむろ&北太平洋ツアー

北海道の東の果ての位置する知床ねむろ・北太平洋エリア。ここで過ごした時間を思い出すたびに心に浮かぶのは、広く静かで、穏やかな中に厳しさも感じる自然の姿。それから、根室で出会った野鳥好きの人が教えてくれた「ここは野鳥の楽園。スポットごとに異なる種類の野鳥に出会えるから、いつか巡ってみるといいよ」という言葉がずっと記憶に残っていました。

次にこのエリアを訪れるときは、端から端まで巡ってみたい。たくさんの野鳥や動物に会ってみたいし、「端っこ」に足を運ぶってなんだかわくわくする。そんな“冒険心”を胸に、「3つの岬を巡る旅」に出かけてきました。北太平洋~知床ねむろを巡り、野鳥や動物たちと出会った1泊2日の旅の記録をお届けします。

※野鳥・動物の写真提供/根室市観光協会

旅のはじまり、霧多布岬でラッコの親子に出会う

東の果ての自然を思うと、「潮風」が浮かんできます。日々のちょっとしたモヤモヤを吹き飛ばしてくれるような、強く凛とした潮風。岬めぐりの旅の始まり、霧多布岬を訪れた際も車を降りた途端に強い風に吹かれて、東の果てに近づいていることを実感しました。

浜中湾と琵琶瀬湾を区切るように突き出した形をしている霧多布岬。湯沸岬(とうふつみさき)が正式名称ですが、現在は霧多布岬という通称で広く知られているようです。切り立つような崖の下には、ゴツゴツとした岩礁が。その険しさとスケールに見入っていると、今回の旅の案内人・根室市観光協会の有田さんが「いたいた!」と何かを指差してくれました。

双眼鏡を使って、有田さんが指差すほうを覗いてみると、そこにいたのはなんとラッコの親子! 楽しそうにくるくるとじゃれ合っている姿が見えました。もちろん普段から自然界で生きている、野生のラッコ。押し寄せる波をものともせずに過ごす姿には、愛らしさと逞しさの両方を感じます。最初に見つけた親子以外にも数頭のラッコが顔を出してくれて、しばし双眼鏡越しの観察を楽しみました。

有田さんによると、霧多布岬では通年、オジロワシの姿が見られるそう。この日は姿を現してくれませんでしたが、まだ次回は荒々しさを感じる風景の中でオジロワシが羽ばたく姿を見てみたいです。

霧多布湿原センター・きりたっぷcafeで昼食を

ラッコ観察に夢中になっているうちに、すっかり身体も冷え、お腹も空いてきました。昼食に訪れたのは、霧多布湿原センター。霧多布湿原を中心とした自然にまつわる情報発信を行うネイチャーセンターです。お土産を購入できるショップや、浜中町産の素材を使った食事やスイーツが楽しめるカフェが併設されているので、旅の途中のひと休みスポットとしてもぴったりです。

浜中ホエイ豚を使用した『ホエイ豚ドック』をパクリ。豚肉のうま味がぎゅっと詰まったウインナーは食べ応えもしっかり。食後に、霧多布高校の生徒とコラボして開発したという『HAMANAKAシェイク』をいただきました。材料はタカナシ乳業の牛乳とバニラアイスクリームのみと至ってシンプルですが、素材そのもののおいしさが合わさって、豊かな味わいが広がります。

カフェの大きな窓からは霧多布湿原が一望できました。眺めているだけでも心癒やされ、「次は緑の季節に来てみたい」という楽しみも。一つひとつの自然のスケールが大きいので、季節が違えばガラリと印象が変わるのもこのエリアの魅力といえるでしょう。また次の季節への楽しみを胸に、センターを後にしました。

きりたっぷcafe/https://www.kiritappu.or.jp/center/cafe

納沙布岬で、秋の終わりの朝日を眺める

翌朝、早起きをして向かったのは納沙布岬。文字どおり東の果てに位置し、北海道で一番早い朝日が見られるとして知られている場所です。この日は10月下旬で、日の出時刻は5時半頃でしたが、6月の夏至付近は3時半頃に日の出を迎えるのだとか。

5時過ぎに納沙布岬へ到着。納沙布岬灯台のそばで、日が登るのを待ちます。手袋をしていないと指先がかじかむような寒さですが、いつもと変わらずゆったりと海に浮かぶコオリガモの姿はとても穏やかに見えます。

少しずつ空の色は明るくなり、空には野鳥のシルエットが。「野鳥観察小屋(ハイド)の空いている時間であれば、寒さをしのぎながらじっくりと野鳥観察ができますよ」と、有田さん。ヒメウ、オオセグロカモメ、ケイマフリ、ウミガラスなどのほか、季節によってさまざまな野鳥に出会えるそうです。

やっぱりここも、強い潮風が吹いています。双眼鏡を覗いたり、写真を撮ったりしているうちに、夜と朝の境目が少しずつなくなって、海面が朝日に照らされてきらきらと輝き始めました。秋の終わり、辺りが真っ暗なうちに車を走らせて朝日を見に行く。それもまた、旅先ならではのちょっとした冒険と言えるかもしれません。

ちなみに、納沙布岬の先ではゼニガタアザラシやラッコが顔を出すこともあるのだとか!比較的よく出会えるそうなので、次回の訪問に期待したいと思います。

〝道東らしさ〟にあふれる場所、落石岬へ

特別な理由や情報があるわけではないのに、どうしようもなく心惹かれてしまう場所。私にとって落石岬は、そんな場所のひとつでした。趣きを感じる木道の両脇には、アカエゾマツの林。アカエゾマツの葉の隙間から温かい日差しが差して、地面に生えるコケやシダ植物を照らしていました。「いいなぁ、きれいだなぁ」と呟きながら、ゆっくりと木道を進みます。

ここは、ハシブトガラ、ゴジュウカラ、コゲラなどの野鳥が生息している場所。野鳥の鳴き声と植物の葉が風に揺れる音を聞きながら歩く時間はとても心地良いものです。立ち止まって双眼鏡を覗くと、枝に留まるゴジュウカラの愛らしい姿が確認できました。

木道を抜けた先で待っていてくれたのは、灯台と、海と、伸びやかに広がる草原の景色。歩いてきた道を振り返ると、2頭のエゾシカ。海と陸の間に柵などはなく、人の手は必要最低限にしか入っていません。ずっと心惹かれていた落石岬は、私が思う「道東らしさ」にあふれる場所でした。

思わず写真を撮りたくなる佇まいの落石岬灯台は、1890年に建てられた歴史のある灯台。赤と白に塗り分けられているのは、積雪期でも目立つように。霧が発生しやすい海域のため、2010年頃までは霧笛信号(視界が悪いときに、船舶に対して音で信号所の概位・方向を知らせるもの)が併設され、地元の漁師に頼りにされていたようです。また、木道に入る前にあったコンクリートの建物は旧無線局で、まちの港との連絡手段に使われていたそう。こうしたエピソードから人々の営みに思いを馳せれば、もう一歩深いところから落石岬を見つめられる気がします。

 

 

ここに来られたうれしさと温かい日差しに誘われて、当初予定していた目的地から少し先の遊歩道まで歩くことに。秋の終わりの落石岬。この旅でいちばんの穏やかな潮風が吹いていました。

コンキリエ・レストラン エスカルで牡蠣料理を堪能。

3つの岬めぐりの旅もいよいよ終盤。旅の締めくくりに選んだのは、厚岸のコンキリエ内にある「レストラン エスカル」。生牡蠣からフライ、パスタなどの洋食まで幅広いメニューが揃うレストランです。豊富なメニューの中から、各々好きなメニューを注文しました。

ふっくらとした牡蠣を口に運ぶと、たちまち幸せな気持ちに。生で食べてもフライで食べてもしっかりとしたうま味を感じます。午前中によく歩いて空っぽになったお腹をしっかり満たしつつ、この旅の思い出を振り返りました。

コンキリエ/https://www.conchiglie.net

あとがき

落石岬で出会ったエゾシカたち。

岬めぐりの旅を終えてからまた季節が進み、窓の外には雪がちらついています。知床ねむろ・北太平洋エリアに吹く風は、また一段と冷たくなっているでしょうか。旅を終えて日常に戻ってからも、こんな風に遠くのまちの風景に思いを馳せられるのはとても幸せなことかもしれません。今回大好きになってしまった落石岬では春になると、サカイツツジという花が咲くそうです。海の色と草の色でいっぱいだったあの場所に、ピンク色の花が咲く風景。再び同じ場所で、新しい風景と出会いに、雪が解けて暖かい風が吹き始める頃、東へ向かって車を走らせたいと思います。

クナウパブリッシングのツアー部門・Slow Life HOKKAIDOでは、知床ねむろエリアを巡るツアーも企画中。今回の旅も、ツアーコンテンツになるかもしれません。企画化された際はお知らせいたしますので、Instagram公式サイトをぜひチェックしてくださいね。

明治公園や春国岱など、ほかにも魅力的なでバードウォッチングスポットがあります。知床ねむろエリアでのバードウォッチングの様子については、こちらの記事でも紹介しています。

 

この旅は「知床ねむろ北太平洋シーニックバイウェイ」の協力で実施しています

知床ねむろ北太平洋シーニックバイウェイついて詳しくみる

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花のまち、東神楽町生まれ。北海道の雑誌「northern style スロウ」・Webメディア「スロウ日和」の編集者兼ライター。編集部のインターネットラジオ「カタカタラジオ」を不定期配信中。元自然ガイドで、森を歩くことが大好き。

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心があったまる人・店・景色に出会える北海道のウェブメディア。パン屋やカフェ、ギャラリーなど、とっておきの寄り道情報をおすそ分け。毎月1冊、ひとつのテーマを掘り下げる縦型マガジンを公開中。最新情報はInstagramから。

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知床ねむろマガジンは「北海道知床ねむろエリアを知って欲しい」という想いで情報を発信しておりますが、新型コロナウィルスの影響下での旅行を必ずしも推奨しているものではありません。マガジンを読んで「知床ねむろエリアにはこんな魅力がある」ということを知り、北海道に想いを馳せていただきたいと考えています。

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