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異国を感じ“旅”について想いを巡らす。根室、落石岬パスを踏みしめながら

根室(ねむろ)を訪れると、時折ハッとさせられることが多いことに気が付きます。

北海道、道東で生まれ道東で育ち、そして道東に暮らす自分だけれど、明らかに他では感じることのない“違和感”を覚え、思考を巡らせる。
いや、違和感と言っても決して悪い意味ではないんだろうな。なんだか同じ道東でも、根室でしか感じることのない特別な空気のような、そんな感じ。

根室南部に位置する落石岬パスを踏みしめながら、そんな根室の“素晴らしき違和感”を探求することにしました。

根室フットパス“落石岬パス”

落石岬パスは、全長7km程のフットパス。ルートの全てを歩こうと思うとJR落石駅から落石漁港を通ってこの落石岬に辿り着くことになります。

だけど今回は車ということもあり、迷った末に一番いい部分だけを楽しむことに。落石岬のぎりぎり車で来ることができる場所まで進み、そこから歩き始めることにします。

今は無線電信局としては使われていない、かつての施設を横目に先を進んでいきます。

木道を抜け、灯台を目指す

鬱蒼とした茂みを横断するように、一直線に伸びる木道が走っています。先を見通そうとしても霞んで見えないくらい、長い道。

左右に広がる木々の中を見渡すと、枯れつつある“やちぼうず”と苔むした岩がそこかしこに。辺り一面に広がる広大な断崖の上。どうしてここだけ木々が生い茂っているんだろう。答えは全然わからないけれど、変化に富んだ景色のおかげで歩き続けていても飽きることはありません。

「森を抜けた…」

そう思って先を見てみると、また木々の間を進む一本道の木道を確認できます。距離はそこまで長くないので疲れはしないのですが、その地形の変化には驚くばかりです。

二度目の木々の間を抜けると、落石岬灯台が見えてきます。若かりし頃であれば、たぶんこの灯台が目的地だったんだろうなと感じます。

景勝地に行くことだけが目的で、そこに着いて少ししたら来た道を引き返して帰路につく。足早に観光地を巡るだけなんて、そんな旅のスタイルにはもう興味を惹かれなくなってきているんだろうか。そしてそんな旅じゃあこの根室の旅はもったいないのも事実。

自らの足で歩き、その地特有の空気感を肌で感じる。「なんでこんな何時間も歩いてるのかなぁ…」なんてたまに我に返りながら、それでも歩みを止めない。

この落石岬パスの何がこんなにも心を惹きつけるのかを一生懸命に考えるんだけど、はっきりとした答えは出ない。でもそれでも別に何の問題もない。そんな旅もいいもんだし、歩き続けることにも徐々に快感を覚えてきている自分も、なんだか興味深い。

最初はもと来た道を引き返そうか? と思っていたのに、気がついたら落石岬パスをぐるっと踏破する道を選択していました。

エゾシカとの出会い

数回に渡る起伏を乗り越え、乾いた喉を潤していると、数十メートル先に二頭のエゾシカの姿が。

驚かすことのないようしばらく遠目から観察していると、大きい方の個体が小さい方を心配そうに見つめ、時折り甲斐甲斐しく世話をしているようにも見えます。親子でしょうか?

人には慣れているのか、慣れていないのかはわかりませんが、警戒することもなく、そして逃げ出すわけでもない。お互いに遠巻きに見つめ合う時間がすごく心地よく感じます。

親子に別れを告げ、さらに一つの谷を下りそして登って振り返ってみると、なんとそこには三頭のエゾシカの姿。気付かなかっただけで、実は三人家族だったのかもしれません。

そしてさらに景色を堪能しながら歩を進めること十数分。そろそろ日も陰ってきたこともあり、早く歩ききってしまいたいと焦りだした瞬間。

眼前に広がる光景に思わず「あっ」と声が漏れ、そしてしばし言葉を失います。

三頭のファミリーとの出会いに満足していたのも束の間、そこにはざっと数えて二十数頭のエゾシカたちが。
その多くは雌のエゾシカでしたが、小さく可愛らしいまだ子供のエゾシカもたくさん。エゾシカたちの住処にお邪魔しているんだなぁということを忘れてはいけないな…。

ここでもお互いの距離は守り、決して驚かすことのないようにその場を去ります。

違和感の正体は、やっぱり漂う異国感

落石岬パスを踏みしめながら、旅っていいな…なんて想いを巡らせながら考えていたこの“違和感”。
この正体はやっぱり、同じ道東でも太平洋側のシーサイドラインでしか感じることのできない“異国感”だったんだなぁとしみじみ思います。

海から直接そびえたつ断崖。しかもところどころ緑に覆われている起伏なんて、なかなか目にすることはできない特別な景色。北海道と言えば雄大で広大な景色が醍醐味の一つですが、ここはまた雄大の種類が違うなと。

今日の根室の天気は、決してカラッと晴れているわけでもない、むしろ霧が出てもやもやっとした空模様。だけど心はなぜか自分の足で旅をしている充足感に満たされる。

根室でしか感じることのできないこの旅の醍醐味。落石岬パスを踏破すれば、きっと満喫することができるはずです。

編集長 | | + posts

知床ねむろの観光に従事する観光ライター。「流氷に乗ってアザラシと一緒に流れてきたのを拾った子」と母に言われて育ちました。