コラム

絶景を目の当たりにした時、あなたは誰と分かち合いたいですか? Re:Confirm 開陽台【Micro Adventure EKARI】

今日も3人の男たちが、ささやかな冒険の旅に出る。いや実を言うと、前回の冒険から新たに2人の仲間が増え、5人での冒険になる。何かと息苦しい世の中になった昨今、身近な大自然に触れる冒険に新たな仲間が増えるのは歓迎すべきことだ。

この日の目的は、開陽台に沈む夕日と星空。焚火を囲みながら、大自然が作り出す絶景を待つ特別な時間が楽しみで仕方がない。

「Micro Adventure EKARI」は、知床ねむろ観光連盟が企画する知床ねむろマガジンのアドベンチャー特集です。知床ねむろエリアに住む人間が中心となって、自分たちが暮らす地域のポテンシャルを再確認するため、ささやかな冒険に出かけます。Jeepレンタルの「トムソーヤレンタカー」、アウトドアギアレンタルの「UB Coffee」の全面的な協力で実施しています。

開陽台で朝日を見ながらアウトドアを楽しんできた、ささやかな冒険の第一弾記事はこちらから
>> 神々しい朝焼けの中で自分だけの絶景カフェを。Re:Start 開陽台【Micro Adventure EKARI】

スノーシューを履いて開陽台を全身で感じる

今回の目的は開陽台の夕陽と星空なのだが、着いて早々に雪が降り始める。ここで一瞬「大丈夫かな、今日……」という不安が全員の顔によぎった。しかし我々には前回の朝日のように、最高のロケーションに出会うことができた確かな実積がある。ここは一抹の不安を拭うように、努めて明るく振る舞い、スノーシュー(西洋かんじき)を装着する。

ただ夕陽や星空を見て、デイキャンプを楽しむだけが目的ではない。開陽台の周辺をスノーシューで楽しむという身体的なアクティビティのトライアルだって兼ねている。雄大な雪景色を見て、冠雪した山々の迫力に感動し、心地よい汗を流す。そうすることで、夕陽を待つ時間、火を焚いて暖をとり、星空に期待する時間だって、より一層魅力が増し、解像度が高まっていくのではないかと思う。

あいにくの降雪と視界の悪さのため、スノーシュートレッキングの様子はほとんど写真に残すことができなかったが、やはり開陽台周辺の景色は抜群に良い。雄大な山々、広大な酪農地帯と起伏のある地形は、何度見ても圧倒される。

開陽台展望館の周辺を歩いて景色を楽しみ、アウトドアギアを運んで、スノーシューを外した辺りでようやく太陽が見え始めた。

絶景を前に、自分だけのキャンプフィールドを

晴れ間が見えたとは言え、ここからは一気に時間との勝負となる。太陽の沈みゆく方向を確かめ、持ち込んだギアをセッティングしていく。時として強い風が吹き抜ける開陽台では、テントや軍幕(パップテント)は必須。風除けという実用的な面だけではなく、もちろん見た目が洗練されているというのも、このささやかな冒険の大事なテーマだ。

確実な原状復帰のためにスパッタシートを敷き、手慣れた手つきで薪を組み上げていく。極寒の中で火を扱う際は、着火の選択肢を複数用意しておくのが上級者なのだと思う。そんな中で、極太で多少の風には負けない最強のマッチをチョイスするところが凄く渋い。もちろんライターなどでも良いのだが、マッチには何と言うか、古くて新しいアナログな魅力があるのだ。

UB Coffeeでレンタル可能なギア一式を使い、辺りが闇に包まれる前に食事を摂る準備を始める。夏と違い、冬はその寒さも影響して自然と顔が強張ってくる。デイキャンプという言葉ではその温度感を適切に表現できず、これは恐らくビバークに近いのかもしれないな……なんて思いを巡らせながら、UB Coffee篠田さんの職人技を見守る。

そして後ろ姿。

粛々と火を操り、屋外のフィールドで調理を進めていく様は、ある意味で様式美なのかもしれない。うまく表現できないのだけれど、まるで座禅を組んでいるような、そんな厳かな雰囲気。

そうこうしている間に、食事の用意が整う。

UB Coffeeの店舗でも提供されているカンパーニュに、熱々のクラムチャウダーを浸して口に運ぶ。店舗で食べてももちろん最高においしいメニューだけれど、一番おいしい食べ方は恐らく「外」なんだろうな。

うまい……そして熱い……生き返る……!!!
芯まで冷え切った体を内側からしっかりと温めてくれる、クラムチャウダー。原材料はもちろん知床ねむろエリアなのが嬉しい。

大切なものを改めて見つめる、Re:confirmという視点

「この絶景、誰と一緒に見たいか、誰に見せたいか、思い浮かぶ人はいますか?」

酪農地帯の彼方に太陽が沈みゆき、その残滓が空をノスタルジックに染め始めた時、篠田さんはこんな質問を投げかける。

「厳冬期にしか見られない幻想的で荘厳な景色を見ると、一番大切に想う人のことが自然と頭に浮かび、不思議とこの景色を分かち合いたくなるんです」

問いかけの真意を図りかね、一瞬おとずれた静寂。それを破るように篠田さんが続けていく。

「僕はこれを、Reconfirmと呼んでいます。再確認という意味です」
「厳冬夜の星空や静寂の時間に、改めて大切なものを確認しに来て欲しいんです。当たり前にあると思っているものが、実は本当に価値あるものだと、再確認できるはずです」

普段は特に意識したことはなかったが、この話を聞いて自分も想いに耽る。絶景を見ると必ず写真を撮る時代になったが、改めて考えると必ずしも写真を撮ることだけが目的ではないはずだ。それを誰に見せたいか。そして感動を共有したいか。それは確かに、無意識のうちに本当に大切にしている人やものを再確認する行為に他ならないのかもしれない。

ところで今日は星空は見えますかね? と、少しだけ不安に思って聞いてみる。星空を最終目的に今回のささやかな冒険を企画した以上、それが見られないと今回の企ては失敗に終わってしまうと感じたからだ。

「全てが完璧に叶えられる必要はないんじゃないですか?」 一瞬の沈黙の後、そんな声が聞こえてくる。

ここでこんなに穏やかな時間を過ごしていることが、そもそも特別な体験。確かに開陽台の満天の星空を見られないのは残念だけれど、そこに至るまでの時間が素晴らしかったのは事実だ。

仲間たち全員が開陽台の寒さに凍え焚火の炎を唯一の拠り所にしている中、一人だけNANGAのダウン素材の寝袋に包まれて無双している自分が言っても何の説得力もないのだが、「凛とした寒さの中で焚火の揺らめきを見ながら、いつまでもこうして自分の内面と向き合っている時間」は最高なのだ。

ふと市街地の方に目を向けると、すぐに街の明かりが見える。

車で15分走れば絶景の大自然に辿り着くことができる、中標津の自然との距離感とバランス感覚は素晴らしい。この地に暮らしてきた人々のアイデンティティにも、色濃く影響を与えているのだろうな……。そんなことを思いながら、ささやかな探検隊は帰路に着いた。

自身の心持ち次第で、旅に彩りと目的が生まれる

「日常から少しだけ冒険に舵をきる」「日常のバランス配分を敢えて変化させることにチャレンジする」

そんなテーマをもって始めたこの企画だが、第二回となる今回も開陽台の新たの魅力に気付かされることになった。

開陽台だけではなく全ての場所に言えることなのかもしれないが、旅は時として自身の内面を映し出す鏡なのではないかと思う時がある。

旅のあり方や価値観が、良くも悪くも変化してきている昨今。こんな時代だからこそ、いわゆる「絶景スポット」「ランドマーク」と呼ばれる場所にも、新たな価値を見出すことができるのではないだろうか。

ただ「見るだけ」「食べるだけ」の旅から「体験を通して内面と向き合う」旅へ。開陽台、そして知床ねむろエリアはそれが叶うポテンシャルを秘めていることは間違いない。

篠田さんの提唱する「Re:Start 開陽台」、そして「Re:Confirm 開陽台」。自分が主体的に価値を見出し、感性を豊かにする旅の一助にして欲しい。

<文章:知床ねむろ観光連盟、写真:小野 隆司>

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知床ねむろ観光連盟 事務局長。知床ねむろマガジン編集長。北海道の最果ての地「知床ねむろエリア」で知床ねむろエリアの、そして道東コーディネイターをしています。

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「知床ねむろマガジン」編集部。知床ねむろエリアが持つ潜在的な魅力を掘り起こし、お伝えしています。

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