コラム

初心者でも撮れる!シャチやクジラを船上撮影するポイントと事前準備【羅臼沖編】

カメラ好きが北海道旅行をしたら、一度はチャレンジしてみたい船上撮影。でもいつもと異なるシチュエーションでの撮影に、不安がある方も多いかもしれません。今回は、羅臼出身で大の海獣好きのKASUMIが、毎年の船上撮影から得た知見をもとに、初めての船上撮影の準備や成功ショットのポイントを解説します。初めてだけれど道東でシャチやクジラを撮影してみたい、海上撮影にチャレンジしたいという方は、ぜひご覧ください。

羅臼沖でシャチやクジラを撮ろう!

今回ご紹介するのは、羅臼沖からの船上撮影です。

海に囲まれた北海道ですが、その中でも羅臼沖はシャチ、イルカ、クジラなど多彩な海の仲間たちに出会える屈指の撮影スポットです。観光船が定期的に出港しているので、アクセスの面でもおすすめです。

百聞は一見にしかずということで、羅臼沖からの撮影でどんな写真が撮影できるのか、いくつか実例をご紹介します。

OKショット①

2021年6月撮影│Camera:α7iii Lens:SAL70400G2 SS:1/1600, F:4.5,130mm

目の周りの白い部分(アイパッチ)がよく撮れた1枚。2頭仲良く連れ添って泳ぐ様子が伝わってきます。

OKショット②

2017年5月撮影│Camera:α77ii Lens:SAL70300G2 SS:1/3200, F:5,120mm

120mmと少し望遠よりにしていますが、船の高い位置から見下ろすように撮影してるためです。実際は船体のかなり近くでゆっくり泳いでるところでした。吹き上げたブローが太陽の光を浴びて虹色に輝いてます。

OKショット③

2017年5月撮影│Camera:α77ii Lens:SAL70300G2 SS:1/2000, F:8,85mm

こちらはうっすら国後島のシルエットが見えています。顔を上げた瞬間を狙いました。

OKショット④

2021年6月撮影│Camera:α7Rii Lens:SAL70400G2 SS:1/1000, F:9,135mm

こちらはマッコウクジラの尾です。波音が聞こえるような瞬間を撮れました。

船上撮影を成功させるためのポイント

1. 揺れを考慮して場所どりする

船上は揺れるので、カメラを構えるのに夢中で横転してしまわないよう注意しましょう。私の場合は、船の先端の腕を固定できる場所に位置どり、船の一部を三脚に見立て、体重を預けながら撮影します。船外に体を乗り出すと危険なので、自分の体が安定しつつ、カメラを構えられる位置を決めましょう。

船に慣れていない方の多くは、揺れの強いの船内でカメラを持って移動するのは困難です。余裕があれば、出港前に船の構造を確認して、自分が撮りたい位置を決めておくと安心です。

2. ガイドさんのアナウンスで撮る方角を定める

船上ではガイドさんが常に生き物を探してくれるので、見つけたアナウンスを参考に、その方角を見つめます。

シャチの場合、じーっと水平線を見ていると、黒いツノのような頭部先端が上がってきます。慣れるまでは見つけるのが難しいかもしれませんが、目をこらしてみましょう。そこから泳ぐ速度を観察し、ガイドさんのアナウンスから、全身が出てくる瞬間を予測してシャッターを押します。

3. レンズは基本変えない

船上での海上撮影では、揺れや天候などによって危険があるため、レンズ交換を行いません。私は24-105mmと70-400mmの2種類レンズを持っていきますが、原則400mmをメインにしています。快晴の日は知床連山がきれいに見えるので、風景と生き物を撮りたい場合は、広角を使用します。

船上撮影でありがちなNGショット

うまく撮れている写真ばかり見ると「本当にこんな写真撮れるのかな?」と思うかもしれませんが、実際はたくさんのNGショットがあります。今回はリアルな撮影をイメージしてもらうために、その一部を紹介します。

NGショット①

完全に潜りきったあとが水面に残ってます。連写してるとこういう写真を量産しがちです。

NGショット②

「遠いな」と思いながらシャッターを切ることに夢中になると、手前の子たちが中途半端な位置で見切れてしまいがち。気づいて引いたころには国後側へ泳いでしまい、ちょっと手遅れだったりすることもあります。

船上撮影の機材とレンズ

まず、カメラとレンズについて、実際撮影に使う機材セットをもとに紹介します。

使用レンズ

私は船上撮影の際はカメラとレンズを2セット用意します。メインのレンズは、SAL70400G2という望遠レンズです。サブレンズはSEL24105Gを持っていきますが、使用せずに下船することもあります。

船上から海獣までの距離は数メートルから数キロ先まで観察範囲が広いため、広角か望遠どちらかに偏ると、撮影できない範囲が生じます。私は使ったことがないですが、28~200mmのような高倍率ズームを使うのもおすすめです。

カメラ本体

カメラ本体は普段から使用しているもので問題ないでしょう。センサーサイズの違いによる距離感の違いやAF性能などの差があるかもしれませんが、使用機材と撮影データを参考にして選んでもらえればいいと思います。

機材を守るアイテム

船上では潮風が強く、波をかぶることもあります。気になる人はタオルや買い物袋でカメラをカバーしましょう。また、下船後はカメラ本体を拭けるよう、クリーニング用品を入れておくことをおすすめします。

その他のアイテム

船上は揺れが激しくなることもあるので、不安な方は酔い止め薬を準備し、乗船前に飲みましょう。

船上撮影におすすめの衣服と注意点

沖に出ると体感気温が5度くらい下がるので、防寒具はオールシーズン必要です。初夏から夏にかけての撮影は、ウィンドブレーカーや登山ウェアのような上下セットのものをおすすめします。

ふだんの写真撮影で使用しているセット(※モデルは協力していただきました)

私はユニクロのマウンテンパーカーと、ワークマンで購入したレインパンツを使用しています。知床の風は初夏でも冷たいので、寒さが苦手な方はネックウォーマーやグローブなども着用しましょう。

また、ピアスやネックレスなどの装飾品や、風に飛ばされやすい帽子は、乗船前にはずしておかないと海の藻屑になります。

靴はサンダルやヒールが高いものは避けて、スニーカーを履きましょう。船内の床は海水で濡れていることがあるので、滑りにくく、汚れても問題ない靴を選ぶと安心です。

初めて乗船するときの注意事項

羅臼沖からは数種の観光船が出ており、いずれかを予約することで船に乗ることができます。ここでは、初めて乗る方が失敗しがちなポイントに焦点をあて、観光船に乗るときの注意事項を紹介します。

1. スケジュール管理は入念に

まず、乗船日は早めの行動を心がけましょう。駐車場で防寒具を着用したり、荷物を整理したり時間もありますし、乗船時にも乗客誘導などの時間があります。他の乗客や船に迷惑がかからないよう、早めに乗り場に到着できるのが望ましいです。

2. 乗船前の周辺撮影は環境と住民に配慮して

漁港内には、帰港後の仕事をする漁師さんや地元の方々がいます。むやみにカメラを向けると迷惑につながります。もしも漁港で撮影するならば、人が映らないよう配慮し、観光船と一緒に記念撮影をする程度にとどめましょう。

ちなみ知床横断道路や相泊方面に向かう道中では、キツネやヒグマなどの野生動物と遭遇することがあります。餌付けしたり近寄ったりすることなく、車内や安全を確保できる距離で、そっと観察しましょう。

3. 船上ではガイドさんの指示を聞こう

船に乗るとつい気分が盛り上がってしまいますが、必ずガイドさんの指示に従ってください。そして当たり前のことですが、ゴミを海に捨てないことや、海に落としそうなものは出さないなど、手元には細心の注意を払いましょう。

毎年船上撮影を続けてみて思うこと

2017年に見たシャチの集団は今でも忘れられません。壮大なジャンプが目に焼き付いてます。ゆっくり泳いで遊んでくれると撮り放題だけれど、野生の生き物相手にそれを毎回求めるわけにもいきません。海上撮影は運まかせ、好条件になるのは奇跡的です。条件がそろわない中で、いかに良いショットを撮影するか、何年撮っても頭を抱えています。

何便乗っても空振り続きの年もあれば、当たり年もある。出港時はベタ凪だったのに、帰港時は揺れまくるなんてこともあります。

毎回成功体験ではないところが、楽しみどころだと思います。もし撮影のために観光船に乗って、シャチや海の動物に出会えなかったとしても、「いないなぁ、つまんないなぁ」と落胆するのはもったいないです。海から望む国後島や知床半島、 海鳥を観察したり、海面を覗いたときの海の色、風で立ちのぼる潮の動きを観察するだけでもおもしろいです。じーっと海面を見つめて、その瞬間を楽しみに待つ時間を楽しんでみてください。

>>> 知床羅臼町観光協会WEBサイト(観光船の詳しい情報はこちら)

>>> 知床ネイチャークルーズ船長が語る「ほんとうの知床」とは?

(アイキャッチ写真提供:岡本大樹)

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羅臼町出身、札幌在住。海と海に生きる物が好きです。

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Uターン移住した北海道札幌市在住のライター・編集者。おいしいものに目がない。趣味は家庭菜園とハーブティー。

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